虚
村の隅にある、寂れた口入れ屋の戸が開く。
立派な剣と古傷をたたえた男が入ってくるなり、口入屋の主人は言った。
「珍しいね、この危険なご時世に旅人なんて」
男は言った。
「腕には自信がある。
魔物退治も『それ以外』でも……常人に困難な仕事をやってみせよう――」
しかし、主人は首を横にふった。
「悪いな、よそを当たってくれ。
うちは口入れ屋だが、人様がやるような難しい仕事なんてないんだ。
そういうことをうんと安くでやってくれる真面目な働き手が、たっぷりいるんでね。
なんせ連中、飯すら食わないで生きていけるんだから」
実
男は目を見張った。奥のテーブルで振り向いたのは、3体の骸骨だったのだ。
まさか――あれがその働き手――?
「そうだよ。骸の兵士たちさ。
簡単な命令を理解して、危険なことからも逃げ出さず、喜々として仕事に取り組んでくれる。
報酬なんて、武器を貸してやるだけでいいんだ。
連中、自分たちの仲間を増やすのが生きがいらしくてさ。
そのために人間の武器や防具を借りたいだけだって」
あんなものを、信用するというのか――?
男の質問に、どこか目の焦点の合わない主人はコクンと頷く。
「信用してるよ。いい働き手ってのは、単純なんだ」
もし裏切られたら――?
「俺もお仲間に加わるだけだろ。歯ぎしりには自信があるぜ。イヒヒヒヒ」
真
数日後――
やあ、あんた。追われてたのかい。
安心しな。こいつらは慈悲深い。
頭と首が繋がってるここの骨をチョンと、綺麗に一発でやってくれる。
ゾンビなんかと同じにしてくれるなよ。
生きたまま人を食うような下品なことはしないんだ。
そうそう、観念しな。
ちなみに、あんたの始末を依頼しに来た男だが……
びっくりするほどの安値に大満足だったさ。
どうなんだい? 銀貨1枚であの世に行く気分ってのは。
深
さらに数日後――
お前は骸骨の中でもずいぶんといい働きぶりだな。
俺もあの世に行く時は、お前にストンとやってもらいたいぜ。
そうだな……褒美に、この一番の業物を貸してやろう。
ん……どうした? ああ、あんただったか。
そうだな、この立派な剣はもともとあんたの物だったな。
巡り巡って元どおり、結局あんたを雇うことになったわけだ。
でもあんた、骨になってからの方が、ずいぶんと輝いてるぜ。
罪
数ヶ月後――
困ったもんだな。
死んでからもお楽しみがあるとわかって以来、誰もまともに人を恨まなくなっちまった。
生への執着ってやつが、薄れていくみたいだな。
恨みがなければ、仕事も入らねえ。
いや、そもそも骸骨ばかり増えて、依頼人がみんな死んじまった。
廃業、かな。
悪かったなお前ら、今までさんざんこきつかって。
でもな、正直俺は羨ましかった。
命令されるままに、気持ちよく殺戮するお前たちがよ。
さあ、この通りだ。俺もお前たちのお仲間に加えてくれ。
これからもずっと、終わることなく、楽しくやっていこうぜ。
俺に代わる、新しい主人を探してさ。
余談
洋の西と東を問わず妖怪の定番、動く骸骨。
人間の体の中にこのようなものが入っているというのは、どの地域でもショッキングな事だったのだろう。
lov1.0では「スケルトンファイター」で参戦。
他にも大型使い魔「スケルトンアーチャー」が存在した。
lov2でも終盤に参戦し、最低コストながら超攻撃特化のステータス+「ハイパーカルシウム」という防御面を補完するアビリティで大活躍した。