虚
スケルトンも軍団を成せば、あなどるなんてもっての他だ。
広範囲を蹴散らす魔法でもあれば雑魚だが、それがなければ悪夢そのものだ。
一対一が大好きな腕自慢の勇者から、あいつらのお仲間に加えられちまうのさ。
実
昔学者から聞いたんだが、人間の特徴ってのは数十での群れで行動できることらしい。
人間ぐらいの大きさの獣は、群れを形成できてもだいたい一桁なんだと。
人間様は「想像力」があるから、二桁以上の人数でも一丸となって動ける……らしいぜ。
あいつらの数と、規模を見て見ろよ。
さすが、元人間だと思わねえか?
真
ロードの前に現れたスケルトンの軍団は武器を置き、一斉に片膝をついた。
どういうことだ……?
困惑するロードは、傍らのワイズ・スケルトンに尋ねた。
この者たちは何をしているのか、と。
「ふむ……お主は戦いを振り撒く者。戦いの果てに死を振り撒く者。
我らが眷属を増やす骸の王……ゆえに力を貸したい、と」
それを聞き、ロードは眉をひそめて無言でたたずむ。
ワイズ・スケルトンは歯をカラカラと鳴らして笑った。
「よいのではないか?
こやつらを野放しにしておれば、お主の嫌いな骸がもっと増えるだけじゃろう」
ロードは渋々と頷き、スケルトンの一団とアルカナの契約を結んだ。
深
月夜の晩のことだった。
ロードが野営地の外れに行くと、月明かりの下でスケルトンの一団が輪になって座っている。
あれは、何をしているのだ?
ロードが問うと、ワイズ・スケルトンは「見ておればわかる」とだけ答えた。
二人のスケルトンが大勢のスケルトンの前に立ち、大げさな身振り手振りで何かを表現している。
やがて二人は剣を抜き、斬り合いを始めた。
片方が片方の首を飛ばすと、見ていたスケルトンは骨しかない手で拍手をした。
あれは……決闘?
いや、あれはまさか……演劇……?
「あの二人、生前は役者だったらしいの。ふむ、流石に、なかなか見事なものじゃ」
十数体のスケルトンの軍団……
元々は全員が……人間だった……
彼らに……名は、あるのか?
「ある。請うならば一体一体教えてやってもよい」
ロードは即答した。教えてくれと。
罪
怖い物知らずのアレックスが先陣をきれ!
川の中にも敵が潜んでいる! 泳ぎが得意なカールは川へ!
殿はリチャード! いつも通り一人もはぐれさせるな!
ロードの指示で、スケルトンの軍勢は精彩を得た。
皆が同じ顔に見えていたスケルトンは、今や全員が唯一無二のロードの配下であった。
ロードの的確な采配によって敵拠点が陥落した後、スケルトン軍団の長は片膝をついてロードに頭を垂れた。
もはや通訳は必要なかった。
ロードは、死を超越した勇敢な戦士たちを十分にねぎらった。
余談
イラストはlovでは「スペクター」から。
スペクターはlov1より登場する古株の使い魔だが、サヴァスロには未登場である。