虚
え、私? 私を仲間に入れたい?
ちょ、ちょっと……考え直した方がいいって!
私、本当にただの人魚だから!
すごい魔法とか歌とか使えないし、も、もう、本当にのほほんってしてきた……ただの、普通の人魚だから!
あなた、皇帝に戦いを挑んでるって噂の人でしょ?
無理! 戦いとか、絶対あなたの足ひっぱるから!
実
きゃ〜! 敵! 武器! 来る! 怖っ!
無理、む〜りぃ〜!
そうだ、水の中に隠れよ……!
……う、うん……水の中なら、見つからないみたいね……
ただの人魚だけど、人魚でよかったぁ……
……本当に、全然気づかれないのね……
人魚の中にいても私って、すっごく影薄い方だったし……
私、一人で占いとかしてれば全然満足だったし……
人魚仲間のおしゃれにも、全然ついていけなかったし……
……あはは……なんか、涙出てきた……
ええい、あたしの涙をくらえ、そこの余所見してるハーピーさん!
あ……た、倒れた!?
私の涙……固い!?
真
うん、ちょっとわかってきたわ……
陸地はやっぱり、駄目ね。
まず水の中に入って……これでよし、っと。
次に、水を固めます。
そして水面からちょっとだけ顔を出して、遠くで余所見してる敵さんを探して……
投げる!
そして、すぐに隠れる!
これを、敵さんが忘れた頃に繰り返す……
うん……私は正面から戦うことも、機敏に避けることもできないけど……
見つからない、一方的に見つける、これさえできれば……普通の人魚の私だって……
「へえ〜、キミ、よくわかってるじゃん」
えへへ……そうですか? あ、褒められたの? 私今、褒められた?
え、誰? エイに乗った三つ叉の槍を持つあなたは……
か、海王様ー!?
逃げ、逃げ、逃げなくちゃ、私なんて突かれたらひとたまりもあわわわ
「いや、ボク味方だから! ちょっと、逃げなくていいから!
あ、陸に上がったら駄目だって!
しかもそっち敵陣、も、もう知らないよー!?」
深
普通の人魚は直感に頼らない……頼れない。
だって、普通だから。
直感に頼れない普通の人魚でも……理論には頼れるって、元王様が教えてくれたわ。
例えばあの敵……たぶん距離は1000ぐらいね。
私が水を打ち出すと、届くまで3拍ぐらいかかるんだって。
だから、3拍先に相手がどこにいるか予想して……えい!
あ……外れた。
少し手前に落ちちゃった。
じゃあもう少し上の方に角度をつけて……えい!
あ、当たった!
うん、距離1000ぐらいなら今の角度ね。
杖に目印をつけておこっと。距離1000ならこの角度……
うん、あの子の言ってた通り……
一見小難しそうに見える理論も、私みたいな普通の存在が頑張れるように整えられてるんだわ。
よし……じゃあ次は、頭の位置に当たるように頑張ってみよっと!
罪
今日ね、マーメイド三姉妹に占いを教えてって言われたの。
私、占いは、ちょっとだけならできるからさ。
かわりに歌とお洒落を教えてもらうんだ。
何年も歌ってないから、きっとすっごく下手なんだろうなあ。
おしゃれも全然わからないから、たくさん笑われるかも。
でもさ、慣れてないうちに上手じゃないのって、全然「普通」でしょ?
それに、慣れていくうちに、工夫したりコツがわかってきたりして、
少しずつ上手くなっていくはずじゃん、「普通」って。
私、普通でいいの。
普通って、とっても素敵ね。
ロード、あなたもわたしの占い教室、来る?
余談
北欧の、予言をするマーメイドを「ハゥフル」と呼ぶとのこと。
lovは3から登場。
マーメイド一人として「ハルフゥ」という個人名を持つ。
4にも登場している。
lovでは「人魚姫ではない、ただの人魚」という設定だったが、
サヴァスロでは「はぐれ人魚。群れていないから能力が高い」
という微妙にずれたリード文が使い魔説明につき、FTもそれに沿うようになっている。
イベント「届け人魚のバレンタイン」ではその「普通」のレベルの高さを、ミリアに驚嘆された。
マーメイド召喚塔やヴィーナスのフレーバーテキストにも登場している。