サーヴァントオブスローンズ(サヴァスロ)攻略Wiki(非公式) - マリー・ルー FT

マリー・ルー


村外れの廃屋に「お化け」が住んでいる……
いたずら好きな少年たちの間で、噂は瞬く間に広がった。
少年たちの栄光は冒険と共にある。
冒険なくして、他の子供たちの尊敬を集めるような栄光はない。
肝試しの日程はすぐに決まった。
満月が木々を照らすその晩、一目置かれようとする少年たちは勇んで家を抜け出す。
廃屋の入り口に集まったのは、総勢10名。
その中に一人、クマのぬいぐるみを抱えた、全身が輝くような銀髪の少女が混ざっていた。
(あれ……こんなやつ、村にいないぞ?)
少女は、勇敢を自負する少年たちの目を引いていた。
「私、隣村から来たの。ね、早く行きましょ。みんなでこのお家に入るんでしょ?」
少女は、目を輝かせていた。


肝試し……いや少年たちによる「調査」が始まった。
頑丈に見えた廃屋の扉は、まるで誘うかのようにあっさりと開いた。
月明かりに照らされた室内は、かび、ほこり、蜘蛛の巣だらけ……
「なあ……何か、変じゃないか?」
一階のダイニングにさしかかったときだ。少年の一人が指差した。
テーブルの上に、空のカップが二つ、置いたままになっている。
「出て行くにしても……こんな食事中みたいな……置いたままにするか?」
「いや、それよりも……人が住んでるんじゃ」
「それはないな。ほら、カップの底にまでほこりがたまってる」
その時、二階から「うわぁっ!」と少年の悲鳴が上がった。
一階の少年たちは顔を見合わせた後、軋む階段を音を立てて駆け上がった。
その先には――腰を抜かした少年と、月明かりに照らされた異物――
白と黒の鍵盤を持つ巨大な家具――恐らく楽器――が鎮座していた。
「これ、すっごく綺麗じゃない?」
いつの間にか側にいた銀髪の少女が、目を輝かせて言った。
呆気に取られていた少年たちは少しの硬直の後、ゆっくりと頷いた。
その楽器には、ほこり一つ乗っていなかった。


「これが誰かが見たっていう『お化け』の正体か……?」
「たしかに……白い歯がある黒い『お化け』に見えなくもないな」
「なんだ、ただの見間違いかよ!」
少年たちは、今までの緊張感を嘲笑うかのように大声で笑った。
少女が進み出る。
「鍵盤がついてるわ。こんなに大きいんだもの。きっと、素敵な音が鳴るわ」
月明かりが窓から差し込む中、少女が鍵盤に白い指先を乗せたそのとき――
「おい、待て!」
一人の少年が唇の前に指を立てて、音を立てないように指示した。
階下で、音がした。
ギイイと、ゆっくりと、扉が開かれる音。
誰か、来た――
続いて、カタカタと……歯や、まるで、骨が鳴っているかのような音。
『お化け』はいなかったんじゃなくて……
いや、もしかして俺たちは……
『お化け』に、はめられただけ……?
本当の肝試しが始まろうとしていた。


適当な廃屋を見繕って『お化け』の噂を流したのは、死霊術士だった。
殺戮――彼らにとっては繁殖行為――に飢えたスケルトンたちを、慰めるために。
「始めろ。せいぜい、狩りを楽しんでこい。子供の骨は、高く売れるしな」
『怖い物知らず』の愚かな子供たちが廃屋に入っていったのを見届けると、スケルトンたちは刃の欠けた剣を手に、ゆっくりと入り口から侵入していった。
すぐに悲鳴、家具がひっくり返る音、階段を転げ落ちる音――そして、楽器の、音?
扉から、窓から、大勢の少年たちが一目散に逃げ出していく。
遠くから見物していた死霊術士は、ため息と同時に独り言を漏らす。
「おいおい……一人も狩れてないんじゃないのか?」
そして少年たちに続いて……
スケルトンたちもまた、死霊術士の元へ泣きつくように駆けてきた。
スケルトンたちは、身振り手振りで死霊術士に訴えかける。
(お化けがいた! あんなの聞いてない! 怖い!)


何十年ぶりだったかな。
やっと、あんなにたくさん「お友達」になってくれそうな子たちが来たのに……
骨の怪物たちのせいで、台無しになっちゃった。
骨の怪物たちも、お友達になってくれるかって聞いたら逃げていっちゃうし……
「お化け」の少女は、一人さみしく鍵盤の楽器――ピアノと呼ぶそれを弾き始める。
悲しげな旋律が、夜の村外れにポロンポロンと響き渡る。
やがて少女も、少女の座る椅子も、ピアノも、そして廃屋自体もふわりと持ち上がり……
「……待ってるだけじゃ、辛いだけ。
素敵なお友達を、私から作りにいかなくちゃ。
お友達と一緒にピアノを弾いたら、きっと楽しい。
……そうだ、お友達がたくさんいる人のところに行ってみよう。
私もそのお友達に入れてもらえればいいんだ」

翌日、少年たちはおっかなびっくり、村外れを再訪した。
探検したはずの廃屋は、跡形もなく消えていた。


余談
物が勝手に動く現象=ポルターガイストを起こしている存在、という半オリジナルキャラクター。
いわゆる「見える人には見える、幽霊少女」。
見えない人には勝手に物が動いたりピアノが鳴ったりという風に思える。

lovでは3に登場。
巨大なグランドピアノと共に浮遊移動する姿が特徴的。

サヴァスロでは冷気を操る使い魔として登場(!?)。
ミニモデルも白いピアノに腰かけている。
フレーバーテキストによると、ピアノどころか屋敷丸ごと彼女の霊体であったようだ。