スクウェア・エニックス社より配信されているスマートフォンゲーム「サーヴァント オブ スローンズ」(サヴァスロ)の非公式攻略Wikiです。

「杉田智和のアニゲラ!ディドゥーーン!!!」コラボイベント
杉田智和氏はサヴァスロの主人公の一人「レイナルド」役。
公式生放送によるとアジルスのカードのフレーバーテキストは杉田智和氏が執筆。
イベントテキストは杉田氏の原案を開発のシナリオライターが執筆したとのこと。



それは訪れ、混沌は回帰する

世界1


激しい戦いの末、ついに勇者は魔王の心臓を貫いた。
断末魔がかき消えるのを待ち、勇者は剣を引き抜く。

終わった。
魔王の死と共に、地上に巣くっていた魔物たちは封印された。
世界は平和になった。
やったぞ。
俺は、やりとげたんだ……!

勇者は歓喜に戦いの疲れも忘れて、夜通し王城への帰路を急いだ。

王城へ辿り着く頃には夜は明けており、勇者の凱旋は国中の歓待をもって迎えられた。

国王は勇者を救世主だと讃え、娘の婿になってくれないかと申し出た。
勇者は面はゆさで鼻の頭をかきながら、それを快諾した。


魔王討伐と勇者の帰還を祝う夜会の席で、それは起きた。


贅を尽くした料理が並ぶテーブルの上、突如浮び上がるようにして現われた魔物。

皆が驚きの一言を発する暇もなかった。
魔物は現われると同時に、巨大な右腕を振り払っていた。

一閃。

勇者は王女を突き飛ばすようにして守り、すでに膝立ちで剣を抜いている。

反応できたのは勇者一人。
宴に居合わせた者の多くが、すでに首から上を失っていた。

少しの間を置いて、勇者の背中で王女の悲鳴が上がる。
それを皮切りに夜の王城は大混乱に陥った。

気を失う者、立ち尽くす者、逃げ出す者……
気丈にも意識を保つ王女が、震える手で勇者の肩にすがる。

「ゆ、勇者様……どうか……」
「ご安心を。お守りいたします」

阿鼻叫喚の地獄絵図の中、勇者と魔物は静かな視線を交わしあう。

「お前は……魔物の生き残りなのか?
だが、魔物は全て封印されたはず」

魔物は、感情を感じさせない声で答えた。

「私はアジルス。
お前の言葉を借りれば
この世界に呼ばれた新たな魔王だ」

「……新たな魔王だと?」

「そうだ。お前が私を呼んだのだ」

アジルスは無表情のまま、勇者に語り続ける。

「お前は魔王の出現を望んでいた。

なぜ魔王の心臓から剣を引き抜いた?
真に平和になったのならば、突き刺したままにしておけばいい。

なぜ今、剣を構えている?
祝いの席ならば
武具は給仕に預けてしかるべきだろう。

お前は何時も、『剣を手放せなかった』のだ。

自覚はなかったか?
ならばそれこそ、お前の深層……欲望だ。
お前は、世界を脅かすほどの敵を望んでいた。
お前が、その力をふるい続けるためにな」

勇者は、幾千の魔物を切り刻んできた剣を握り込む。

驚くほど、『しっくりきた』。

剣の感触も、アジルスの言葉も。

勇者の血は沸き立っていた。
世界を破壊する新たな魔王が現われてくれたことに。

それは、認めざるを得ない歓喜の興奮だった。

世界2


(まだ大丈夫。まだ低迷の兆しは見えない……まだ大丈夫……)

このゲームをリリースして、もう5年。
オンライン時代となり、ゲームは開発と運営がセットで語られるようになった。

昔のように1作品を完成させればすぐに次の作品に取りかかる……
そんな時代ではない。

成功している限り、1つの作品に何年も関わり続ける。
何年もユーザーに遊んでもらい、飽きさせてはいけない。

どんなに面白いことでも、人間は飽きるように作られている。

同じ事にずっと飽きなければ、進化のレールから外れたと同じだからだ。

人間は進化のために刺激を追う。
だからこそ飽きる。
それはヒトの本能だ。
その本能に挑戦し続ける――
次から次へと魅力的な企画を考え、通し続ける――
お客さんを飽きさせないって、そういうこと――

俺は深夜のサーバールームで、次の企画を考えていた。

定期メンテナンスでエラーを取りながらの片手間の仕事だ。
大したことのないエラーは自力で直してしまった方が早い。

ユーザーやお偉いさんはすぐに不具合をバグだと騒ぐが、
エラーとバグは大いに違う。

エラーは、ゲームが風邪を引いたとか腹を冷やしたとか、そういう不具合全般。

バグは、ゲームの腹の中にメスを入れたまま閉じてしまったみたいな、人災で致命的なものだ。

だから、何でもかんでも「バグを直せ」と言われるのはちょっとうんざりする。
俺たちはエラーは生んでもバグだけは出さない、それがプライドだからだ。

その時だった。
それが現われ、世界が一気にバグったのは。

スパーク、火花、閃光――
一瞬遅れて音、爆音。発火。火柱。

いきなり現われた女は異常に大きな右腕でサーバーをえぐりとっていた。

クリームをスプーンで横にすくったかのような
滑らかな傷痕。
嘘だろ……?
バックアップ急げとか
そういう次元の被害じゃない。
俺のゲームの世界は、終わった。

「あ、あんたは……何だ?
神様もこの世界の運営に
エラーを出すのか?」

炎の中、女は無表情で答える。

「私はアジルス。
エラーではない。
お前の言葉で言うなら、バグだ」

バグか。そりゃお手上げだ。

「お前は心の底で、飽いていた。
世界の終わりを望んでいた。
お前の作った世界、この世界、どちらにもな」

俺はどきりとした。
そんなことを思ったことは、無かった。
だがそう言われるとそうとしか思えなくなっていた。

この世界に、いきなり怪物が現われる。
そいつは大きな腕をふりかぶって、冗談みたいな爪でサーバーと俺を引き裂く。
ほんと、バグにしてもひどすぎる。

だが俺は、最期の瞬間に安らぎを感じていた。
何年ぶりかの、長い休暇に向かう気分だった。

世界3


村の男たちの趣味は、もっぱら酒だ。

一仕事した後の娯楽と言えばそれぐらいで
暇さえあれば山登りなんかをしている僕は
ずいぶんと「おかしなやつ」だった。

おかしいものか。
山登りは、いい。
高く登れば登るほど、
暮らしの煩わしさから離れていく気になる。
酒のやりすぎで舌や頭が回らなくなるよりは
大いにけっこう――

そんな僕が「自分は、おかしいのでは」と思ったのは、
村から離れた崖の頂上に辿り着いた時だった。

「誰が……こんなものを……
どうやって、ここに……?」

崖の端、おぼろげな霧の中から浮び上がったそれは――

今まで見たどんな石工の手にも勝る美しい天使と悪魔の石像だった。

天使と悪魔は互いを抱きかかえるように座り
恋人のように睦まじい微笑みを交わしあっている。

その大きさは、人間と同じと言っていいだろう。
何人がかりだろうと、山道を運んでこられる代物ではない。
“生きたままここで石にされでもしない限り”は――

僕の常識がますます怪しくなるのはそれからだった。


それは僕の背後に立っていた。


「私はアジルス。
その二人の言葉を借りれば、永遠」


誰――女――
天使――いや、悪魔――?
もしかして――死神?

アジルスなのか永遠なのか、それは僕に解説する。

「遠い昔……この二人は
禁忌とされる恋をしていた。
同族たちに隠しながら
永遠の愛を誓っていた。
それが一つの方法でしか叶わないと
無意識で認めながらな」

この石像が――生きていた――?

「永遠は現われ、永遠は世界を滅ぼした。
翼のないお前は、遠い子孫というところか」

世界を滅ぼすことで手に入れたいものができたなら
私はお前の前に現われるだろう――

そう言うと、アジルスは幻のように消えた。
だが石像は消えなかった。

それは、当然のものとして
ずっとそこに在り続けた。

世界4

ぼくは、不当にうばわれつづけている。
ぼくの権利は、ずっとかすめとられるばかりだ。

ぼくが王様だったのは生まれたときだ。
ぎゃあぎゃあと泣くだけで、何だってしてもらえた。
ぼく自身は、何ひとつしなくてよかった。

それが、今やどうだ。
毎朝、決まった時間に起きなければいけなくなった。

学校に行かないといけなくなった。
宿題をしないといけなくなった。
自分で考えないといけなくなった。

めんどうくさいことばかりが、増える。

お父さんとお母さんは
「どれも大人になるための訓練だ」と言う。
かってなことを言っている。

お父さんとお母さんが、かってにぼくを大人にしたいだけでしょ。

ぼくの権利を減らすことで、自分たちの義務を減らしたいから。

もうほんと、うんざりだ。
40日あった夏休みも
今日でついにおしまい。
大人になると、夏休みは3日しかないらしい。

どうして僕は、大人になって損をするために生きているのだろう?

とりあえず、明日の学校が
休みにならないかな……

神様、どうか学校に隕石を落としてください……

その時だった。
すごくかっこいいそれが
僕の前に現われたのは。


「私はアジルス。
お前の言葉で言うならば、神さまだ」


え、お、お姉さん……
神さま……!?
神さまきた……!?

「お前のこの『夏休みの作文』……これに書いてあることは正しい」

読んだの!?

「次が始まらなければ、今は終わらない。
次が始まらなければ、今はずっと続く。
その通りだ。
大人が始まらなければ、子供は終わらない。
この世界が壊れてしまえば、今この時は永遠に続く」

やっぱり
やっぱりそうだよね!?
だよねだよね!?
ほら
ぼくってやっぱり天才――

アジルスは右腕を大きく振りかぶる。
それは、少年の頭に隕石のように降り注いだ。

世界5


「私はアジルス。
お前の言葉を借りれば、運命だ」

帝国のロードたちとの戦いの後、
炎がゆらめく戦場に突如それは現われた。

アルカナの力に寄ってきた使い魔……?
いや、何か違う……

「殺戮の運命。崩壊の運命。
この世界に入った亀裂に指をかけ、
押し広げて粉々にするというお前の運命。
私はそういった破滅を望む者に呼び寄せられ――
世界を壊す者」

その言葉を聞いて、ディアナはアジルスに剣を向けた。
アジルスは意に介する風もなく続ける。

「ディアナよ。
誰もお前を責めはしない。

お前は、あの日まで大切に育てられた王女でしかなかった。
それがあの日を境に一転、仇討ちと王国奪還のための戦士となった。

戦力差は絶望的。
何もかもうまくいかない世界なら世界の方が壊れてしまえ――

人はそう願うものだと、私は今までの経験から知っている」

だが、アジルスを睨みつけるディアナの切っ先には、わずかなぶれも無い。
炎の中、立ちこめる煙を振り払うように、ディアナは叫ぶ。

「私は……確かにそう願ったこともある。
この先、心がまたその一色に染まることがあるかもしれない。
だが。だとしても。
私の意思と行動を誰かに託して逃げるようなことはしない!」

その時、アジルスに初めて表情が生まれた。
それはわずかに……
だが確実に、嗜虐的な笑みだった。
たがの外れた戦士が、戦を前に興奮を抑えきれないような。

「託す……?
それは違う。
私は、世界を壊すにあたって自動的なのだ。
アークレックの王女ディアナよ。
お前の意思が介在できるのは、私を呼んだその時まで。
もうお前の意思は関係ない。
私はただ、世界を壊すだけだ」

「そうか。
皇帝軍ですらない、お前一人で新たな勢力というわけか。
そして世界を破壊するというお前を……私は看過できない!」

「来い。真紅の瞳のディアナよ。
自らが呼び寄せた破壊の運命、その強大さを知るがいい」

戦闘後


「なぜだ……
お前には確かに生きる意思がある……」

ディアナは使い魔たちの前に立ち、アジルスに言い放つ。

「当然だ。
死の誘惑など、今までに数えきれぬほど触れてきた。
それを皆とはねのけてきたからこそ、私はお前の前に立っている」

アジルスは地に膝をつきそして首をかしげた。

「おかしい……
私を呼んだ者は、甘美なる破滅の救済を受け入れていた。
抗う者も、最良の死を得るために私に抗った……」

ディアナはそれが負け惜しみではないと感じた。
アジルスは本当に疑問を持っている?
真剣に、探っている……?

「ディアナよ。
まさかお前は、違うのか?
私を呼んだのは、お前ではないのか?
では誰が私を――
この場には、お前の他には――」

その言葉に
ディアナは辺りを見回す。
自らが召喚した使い魔たち以外には、他に誰もいない。

「……アジルス。
お前の事情はわからない。
だがお前が破壊を使命とするのならば……
私と共に来るといい」

「お前と共に?」

「そうだ。
確実なことは、私の意思に関わらず戦いが私を逃さない。
それだけだ」

アジルスはそこで、はっとしたようにディアナを見上げた。

「戦いがお前を逃さない……?
世界がお前を逃がさないということか?
そうか。
なるほど、そうか。
そういうことか」

アジルスは一人、合点したようだった。

アジルスのガラスのような瞳に、ディアナはその真意を測りかねる。

「世界の破滅を望んだ者が何者か、わかった。
ディアナ、私はお前と共に行こう。

ディアナよ。
私はお前の言葉を借りれば――
使い魔だ」

その存在は、敵か味方か。

世界の破壊者アジルスが
ディアナの一団に加わった。

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