夕暮れの森に静寂が訪れる。
「腹が減った。飛んだ者を撃つ」
樹上で弓を構える射手は、森の吐息のように静かにそう言った。
警告ではない。そう決めているという、宣言だった。
沈黙に耐えられず、遊び好きな鷹の子供が茜空を飛んだ。
その首筋を、音もなく一本の矢が射止めて落とした。
落ちた子鷹を、たくましいかぎ爪の親鷹が射手の元へと運ぶ。
「詫びはしない。狙った獲物は外さない。それがロビン・フッドだ」
親鷹は畏敬をもって頭を垂れるように、その場を動かなかった。
「腹が減った。飛んだ者を撃つ」
樹上で弓を構える射手は、森の吐息のように静かにそう言った。
警告ではない。そう決めているという、宣言だった。
沈黙に耐えられず、遊び好きな鷹の子供が茜空を飛んだ。
その首筋を、音もなく一本の矢が射止めて落とした。
落ちた子鷹を、たくましいかぎ爪の親鷹が射手の元へと運ぶ。
「詫びはしない。狙った獲物は外さない。それがロビン・フッドだ」
親鷹は畏敬をもって頭を垂れるように、その場を動かなかった。
この森を通るな。
この森は俺、ロビン・フッドの森だ。
お前は、家にずかずかと上がり込む異邦人を許すか? 許さないだろう?
そうだ、おとなしくこの森を去れ――
不思議な声が森をこだまする。
みすぼらしい男は一歩あとずさり、二歩目で背を向け、三歩目で駆けだした。
「行ったか。あいつは俺の仲間じゃないな」
樹上の射手、ロビン・フッドはつがえていた矢を矢筒にしまう。
「帰る場所があるなら、帰ればいいんだ」
この森は俺、ロビン・フッドの森だ。
お前は、家にずかずかと上がり込む異邦人を許すか? 許さないだろう?
そうだ、おとなしくこの森を去れ――
不思議な声が森をこだまする。
みすぼらしい男は一歩あとずさり、二歩目で背を向け、三歩目で駆けだした。
「行ったか。あいつは俺の仲間じゃないな」
樹上の射手、ロビン・フッドはつがえていた矢を矢筒にしまう。
「帰る場所があるなら、帰ればいいんだ」
当たらないかもしれない――
いつ以来の感覚だろう。
いや、初めての感覚かもしれない。
森で出会ったアマゾネスの少女に矢を向けて、ロビン・フッドは驚愕した。
どれほど音を立てず樹上を跳んでも、
少女のきらきらした瞳は正確に己の姿を追い続けている。
「おい、お前、人間か!? すごいな! ママリリと追いかけっこできるかも! なれなれ、お前、ママリリの友達、なれ!」
「友達……?」
少女から敵意は見て取れない。
どのみち、この少女には隠れても無駄だ。
ロビンフッドは樹上から降り立ち、姿を晒す。
「俺はロビン・フッド。友達は探していないが……仲間は募集してる」
「仲間? ママリリは友達を探してる。じゃあ、こうしよう! ママリリはお前の仲間、なる! お前はママリリの友達、なれ! 一緒に冒険する、ぜったい楽しい!」
いつ以来の感覚だろう。
いや、初めての感覚かもしれない。
森で出会ったアマゾネスの少女に矢を向けて、ロビン・フッドは驚愕した。
どれほど音を立てず樹上を跳んでも、
少女のきらきらした瞳は正確に己の姿を追い続けている。
「おい、お前、人間か!? すごいな! ママリリと追いかけっこできるかも! なれなれ、お前、ママリリの友達、なれ!」
「友達……?」
少女から敵意は見て取れない。
どのみち、この少女には隠れても無駄だ。
ロビンフッドは樹上から降り立ち、姿を晒す。
「俺はロビン・フッド。友達は探していないが……仲間は募集してる」
「仲間? ママリリは友達を探してる。じゃあ、こうしよう! ママリリはお前の仲間、なる! お前はママリリの友達、なれ! 一緒に冒険する、ぜったい楽しい!」
「ママリリは、どうして友達を探してるんだ?」
「え? なんでそんなこと、きく? 友達、たくさんいたら楽しい! だから探してる!」
森をゆく道中、あまりにも明快な受け答えに、ロビン・フッドは苦笑した。
「たくさんいたら楽しい、か……そうか、そうだったかもな」
都を追われたならず者たちが集まった、シャーウッドの森……
時とともに「義賊」として組織化されていったそれも、最初は単に「楽しい仲間」の集まりに過ぎなかった……
リトル・ジョン、アーサー、タック、マッチ、二人のウィル……
そして、本物のロビン・フッド。
……本物の、ロビン・フッド?
今、俺の頭の中に浮かんだものは、何だ?
いや、今思い浮かんだ面々は……誰だ?
そもそもシャーウッドの森とは……何だ?
この世界にそんな森は……ないぞ?
「え? なんでそんなこと、きく? 友達、たくさんいたら楽しい! だから探してる!」
森をゆく道中、あまりにも明快な受け答えに、ロビン・フッドは苦笑した。
「たくさんいたら楽しい、か……そうか、そうだったかもな」
都を追われたならず者たちが集まった、シャーウッドの森……
時とともに「義賊」として組織化されていったそれも、最初は単に「楽しい仲間」の集まりに過ぎなかった……
リトル・ジョン、アーサー、タック、マッチ、二人のウィル……
そして、本物のロビン・フッド。
……本物の、ロビン・フッド?
今、俺の頭の中に浮かんだものは、何だ?
いや、今思い浮かんだ面々は……誰だ?
そもそもシャーウッドの森とは……何だ?
この世界にそんな森は……ないぞ?
「フェニックス……お前は死と再生をつかさどる不死鳥だというじゃないか」
「いかにも。我は永劫の時をゆく旅人にして、世界の輪廻を見守る者」
それを聞いて、ロビン・フッドは吹き出す。
「たいそうかっこいいことだが、今のお前はママリリの常備食かつ、焚火の火付け役だからな」
「永劫の時の中にあっては、かようなこともある……と我も思いたい」
「本題に入るぞ」
ロビンフッドは、矢のような鋭い視線で不死鳥を射ぬかんとする。
「お前が生きてきたその長い長い時間の中で……
シャーウッドの森という場所は、この世界にあったか」
「……」
「失地王ジョンという名を聞いたことは? いや……ロビン・フッドという名を聞いたことは、あるか?」
不死鳥の炎が、かすかにゆらめく。
「……ある」
「あるのか!?」
「あるが……我もまた、惑うている。それが……我が知るこの記憶は……我が見聞きしたものではない。この世界とは断絶している、なぜか存在する遠い記憶……」
「……お前も、俺と同じってことか」
「理の歪みを感じる……おそらく、アルカナの力が何かを引き起こしている。……ロビン・フッドよ。真実を追うことが必ずしも幸福とは限らぬぞ」
ロビン・フッドは鼻で笑った。
「真実はもう、俺の獲物の一つだ。狙った獲物は外さない。それがロビンフッドだ」
「いかにも。我は永劫の時をゆく旅人にして、世界の輪廻を見守る者」
それを聞いて、ロビン・フッドは吹き出す。
「たいそうかっこいいことだが、今のお前はママリリの常備食かつ、焚火の火付け役だからな」
「永劫の時の中にあっては、かようなこともある……と我も思いたい」
「本題に入るぞ」
ロビンフッドは、矢のような鋭い視線で不死鳥を射ぬかんとする。
「お前が生きてきたその長い長い時間の中で……
シャーウッドの森という場所は、この世界にあったか」
「……」
「失地王ジョンという名を聞いたことは? いや……ロビン・フッドという名を聞いたことは、あるか?」
不死鳥の炎が、かすかにゆらめく。
「……ある」
「あるのか!?」
「あるが……我もまた、惑うている。それが……我が知るこの記憶は……我が見聞きしたものではない。この世界とは断絶している、なぜか存在する遠い記憶……」
「……お前も、俺と同じってことか」
「理の歪みを感じる……おそらく、アルカナの力が何かを引き起こしている。……ロビン・フッドよ。真実を追うことが必ずしも幸福とは限らぬぞ」
ロビン・フッドは鼻で笑った。
「真実はもう、俺の獲物の一つだ。狙った獲物は外さない。それがロビンフッドだ」
ロビン・フッドは英国の伝承・伝説に登場する英雄。
舞台は1200年ごろの中世、シャーウッドの森に拠点を構える弓の名手で、金持ちから奪い貧しい者に分け与える盗賊=義賊とされる。
英国史上最も人気のない王「欠地王ジョン」(実在の王)と戦ったりする。
なお、頭の上にのせたリンゴを撃つのはロビン・フッドではなくウィリアム・デルである。
lovでは3から登場。
射手のはずだがアタッカー(ダッシュ近接攻撃)というインファイトスタイルがしばしばネタにされた。
フレーバーテキストによると、「彼女」はロビンフッドの恋人であり、
消えてしまった本物のロビンフッド(男性)の代わりにロビンフッドを名乗っていることが明らかにされる。
サヴァスロの彼女もまた、その設定を受け継いでいるようだ。
そしてサヴァスロの世界にはシャーウッドの森は無いらしい。
舞台は1200年ごろの中世、シャーウッドの森に拠点を構える弓の名手で、金持ちから奪い貧しい者に分け与える盗賊=義賊とされる。
英国史上最も人気のない王「欠地王ジョン」(実在の王)と戦ったりする。
なお、頭の上にのせたリンゴを撃つのはロビン・フッドではなくウィリアム・デルである。
lovでは3から登場。
射手のはずだがアタッカー(ダッシュ近接攻撃)というインファイトスタイルがしばしばネタにされた。
フレーバーテキストによると、「彼女」はロビンフッドの恋人であり、
消えてしまった本物のロビンフッド(男性)の代わりにロビンフッドを名乗っていることが明らかにされる。
サヴァスロの彼女もまた、その設定を受け継いでいるようだ。
そしてサヴァスロの世界にはシャーウッドの森は無いらしい。
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