スクウェア・エニックス社より配信されているスマートフォンゲーム「サーヴァント オブ スローンズ」(サヴァスロ)の非公式攻略Wikiです。


磁撃の塔/ベガ

それは「最初」からそこにあった。
人が歩み寄るより早く、獣が分け入るよりも早く、その浮遊する異形の塊はそこに漂っていた。
何を狩り出すわけでもない。何を求めるわけでもない。
ただ、興味を持ち近づいたものを業火の雨を降らせて溶かす。
罠――?
いや、そんな意思のあるものではない――
いつしか、人々は共通の認識に染まっていた。
決して触れてはならぬもの――
あれこそが、神なのではないか。

機甲、ベガは静かに宙を漂う。
待機モードを続けながら、4789037492500137回目の自己スキャン――異常なし。
スキャンはそのような結果を伝えても、自己評価プログラムは正常を告げない。
異常はない。だが正常とも言えない……
ベガは自らの任務「この世ならざる者の排除」を実行するにあたって、その標的がこの世界全てということを異常事態と捉えていた。
標的の中には「誤った排除」をしないように、外見データを与えられていたものまで無数に含まれている。
一つの利器として任務を遂行するはずが、自らは矛盾の最中にある。
……自らが、欠陥品と呼ばれる状態にあるというだけなのか。
……ならば、欠陥品らしく……
そのとき、ベガの上部にぽつりと水滴が落ちた。
やがて雫は粒を増し、すぐに大ぶりの雨となった。
「悪い、神様! 雨宿りさせてくんろ!」
そこに、命知らずな人間の幼生……少年が駆け込んできた。
……
ベガは炎を吹かず、ただ静かに雨の盾となっていた。

その日、ベガはおかしなものを目にした。
彼方から地を鳴らしてやってくるのは、黒い直方体を組み合わせたような機甲巨人。
機甲――!
ズームしてみれば、その足元には双剣を構えた人間が、その肩には妖精と呼ばれる生命体が座っているではないか。
機甲……データベースに登録されている、自らと同じ役目を持つ自律兵器。
当然にいるはずだが……この永劫たる時の経過において、その存在に「誤情報」のタグをつけていた同種。
機甲巨人……タイプ・ツバーンも当然にこちらを認識している。
ベガは「戸惑った」。
このような状況、どのような通信を送ればいいのだろうか。
いや、自らは欠陥品として……あのツバーンに処分される運命にあるのだろうか?
それよりも……
近寄ってくるツバーンに対する「攻撃対象」の印が消えない。
同じ機甲種ならば、当然敵同士であるはずはないというのに。
ベガはふわりと重力に反して上昇し、火砲の照準をツバーンの頭部にあわせた。

――ベガよりツバーンへ。ツバーンはベガを攻撃対象とするか。
――諾。ツバーンよりベガへ。ベガはツバーンを攻撃対象とするか。
――諾。処理の前に、ベガより1つの確認項目が持つ。
――諾。処理の前に、ツバーンも1つの確認項目を持つ。
「「汝は我を、欠陥機と見なすか」」――
互いの疑問から先は、恐るべき通信速度での情報共有が行われた。
単体ではできなかったこと――それは互いのプログラムを用いた互いの精査だった。
それぞれの自律プログラムに異常が紛れ込んでいないかを、照らし合わせる。
瞬時に二機は、一つの結論に達する。
我々は――欠陥機ではなかった。
「ねえソエル……この子たち、なんか、仲良くなったみたいだよ」
「お前にもわかるか。うむ、これは……泣いているな」
「涙は流してないけどね。ま、友達に出会えたのは、いいことだよね」
フェアリーはソエルの肩を離れて、ベガの上部に目線を合わせる。
「ねえあなた、なんて言うの?」
夕焼けを背に、ゴーンゴーンとベガに内蔵された鐘音が鳴った。

宙を舞う赤い巨影が、光線状の炎を吐いた。
さらにその周囲を飛ぶ子機が、まるで格子を編むように熱線を走らせる。
土は焼けただれてえぐれ、いくつもの深い溝が掘られていた。
「……何か、書いたのか?」
ソエルは首をかしげる。
「上から見てみる!」
フェアリーがぱたぱたと上空へ向かい、小さな体を震わせて大声を出した。
「『ベガ』って書いてある! これ、あなたの名前ね!?」
ベガは答えない。
「こっちの巨人の名前は!?」
ベガは再び瞬時に熱線を放つ。
その動きの無駄の無さ、放射の正確さに、眺めていたソエルは昂揚を覚える。
「『ツバーン』! こっちの巨人はツバーンって言うんだって!」
「ベガ……それにツバーンか。お前たちのような……強い機甲は、他にもいるのか?」
不明、不明――
「私は強い者を探している。お前たちは機甲を探す。そして機甲は強い。こういう場合、目的は同じかもしれんな」
二体の機甲は無言で意思を交わし、ソエルの後をゆっくりと追った。


余談
lovシリーズのオリジナル使い魔、「機甲」と呼ばれる存在。
自律し、意思を持たず、淡々と任務をこなす。
機甲の名前は恒星から取られており、ベガはこと座α星、七夕の織姫にあたる。

lov1ではその圧倒的な戦闘力から1全体を通じて君臨した。
レアリティがRで排出率が高かったことも、普及に貢献しただろう。

lov2以降は、機甲という種族自体が消滅してしまった。(7種族から5種族になった)
フレーバーテキスト上では海の覇権を握ろうとするポセイドンが機甲種を回収し、海種として採用。
改修されたベガの一機は「テンペスタ」と名前とカラーリングを変えて実戦投入された。

機甲種は、元々古代人たちが「世界を食らう真の敵」に備えて作り、残した世界の防衛装置だったらしい。
だが各アルカナの世界が重なり会うことで、人間や他の生命まで「侵入者」として破壊するように暴走。
しかし一部は「心」を手に入れるなど、様々な変化を遂げた。

サヴァスロでも、やはりベガはエラーを起こしている模様。
「真なる敵との交戦」のみを任務として持つはずだが、その交戦対象が「この世界の全て」となっているらしい。
自らが欠陥品だと診断したところに、同様の疑問を持つツバーンと出会い、ソエルたちと行動を共にすることになる。

なお「4789037492500137回目」という数字は、lov3のストーリーモードでクトゥルフ(2回目)が言う主人公らが転生した回数と同じ。
具体的な意味があるというわけではなく、執筆者の遊び心だろう。

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