「ハルフゥちゃん、新ブランドを立ち上げよう!」
「え、新ブランド……? な、なにそれ」
「私考えたの! 人魚の悲恋のイメージはバレンタインにぴったりだって!」
「は、はあ……私、恋とか無縁なんだけど……」
「届くか届かないかギリギリを攻める、人魚のバレンタイン!
さあ、ドキドキの二乗の始まりだよ!」
「え、新ブランド……? な、なにそれ」
「私考えたの! 人魚の悲恋のイメージはバレンタインにぴったりだって!」
「は、はあ……私、恋とか無縁なんだけど……」
「届くか届かないかギリギリを攻める、人魚のバレンタイン!
さあ、ドキドキの二乗の始まりだよ!」
じゃじゃーん。
作ってみました、義理人魚チョコです。
なんだかね、今日渡すチョコの中では一番レベルが低いチョコらしいの。
私と勝負して勝ったら、この義理人魚チョコをあげます。
たくさん作ったから、みんな頑張って挑戦してね。
味?
味はたぶん、普通よ。
普通であることには自信があるんだから。
ちょっと、そこの人魚の女王様、「変な人魚」とか言わない。
私はフツーです!
さ、義理人魚チョコ争奪戦、スタート!
ペロリ……
こ、この味は……!!
ふふふ……私の見込み通りだったね。
この味は極上……
彼女、自分を「普通」だと思ってるけど
「普通」の基準が明らかに高い……!
圧倒的女子力……
私もリリスちゃんも、見習うべきところが多い……!
見習うべきところだらけ……!
あ、ロード、聞いてた?
聞かれてはまずいことを聞いちゃったね……
サキュバスの股間……じゃなくて、沽券にかかわることだよ。
私の作った淫魔チョコを味見してくれるなら許しちゃう☆
ふふふ……その直感は正しいと思うよ。
でも、逃がさないよ!
じゃじゃーん。
第二段も作って見ました。友チョコ。友人魚チョコ。
友達にあげる、レベル2のチョコらしいの。
でも私、友達ってあんまりいないから……
誰かもらってくれると嬉しいんだけど……
え……ええ!?
み、みんな欲しいの!?
うそ、そ、そんなにいっぱい作ってないわよ!
ど、どうしよ……
そうね、悪いけど、私に勝った人にプレゼントってことにします。
負けちゃった人と足りなかったぶんは、後日に作ってあげるからね。
はい、欲しい人は一列に並んで〜!
ふふふ……
ロード、気づくのが遅かったね。
そう、黒幕は私。
すでに計画は実行されている……
私があちこちにばらまいた「義理人魚チョコ」……
どうなってると思う?
食べた男の人たちは、みんな次々に海に飛び込んでるよ。
彼女に一目会いたくてね。
人魚が恋のために陸に上がる情熱……
「逆」があるかどうか、ずっと知りたかったんだよ。
人間が人魚に恋して、海に飛び込めるのか?ってね。
答えは出た。
彼女の義理人魚チョコによって……
これは淫魔の人間学を10年先に進める大成果だよ……
さあロード。
早くしないと人間が溺れ死んでしまうよ。
この私を倒して、魔法を解いてあげないとね!
そう、黒幕は私、マッドサキュバス・ミリア!
言ってみたかった!
そうなんです、黒幕は私でしたー!
ひゃん! お仕置きは優しくね?
……ロード……こんな所に呼び出してごめんね。
わかってるよね……?
うん、これは……
人魚のみんなと総力をあげて作った幻のレベル3……
人魚本命チョコ。
これは……その……とても大切なものなの。
だからあなたに……
あなたに……
ある人に届けてほしいの!
え?
あ、あなた用じゃないわよ。
人魚の女王様が、陸にいる元王子様に届けてほしいって……
もう、病気のおじいちゃんだけど、お見舞いがてらにって……
ほら、女王様、ああ見えてすごく恥ずかしがり屋だし。
足を生やすのも大変だから、ロードにお願いしようって……
え!?
こ、断る!?
この人魚本命チョコは自分で食べる!?
ど、どうしちゃったの!?
なんで怒ってるの!?
ああダメ、ロードが食べるなんて絶対に許さないんだから!
女王様のためにも、私は負けないんだから!
嫉妬の炎――黒淵の焔に捕われたロードは、ついに人魚本命チョコにかじりついた。
「ああ……チョコが……!」
だが次の瞬間……
爆発!!
ロードは彼方へ吹っ飛び、地に伏した。
「すり替えておいたのさ……!
二人が戦っている間に、
人魚本命チョコを
マンドレイクチョコとね!」
「その声は、ミリア……!」
「ハルフゥちゃん、ロードのケアは私に任せて。
ロードが心身共に疲れ果てた時こそ、サキュバスの歩み寄る余地が生まれるというもの。
ここで思いっきり甘やかして、ロードは私にメロメロなんだから」
「まさか……最初からそれが狙いで!?」
「そう……黒幕は私。これが本当のエッチポンプ!」
「マッチポンプじゃない……?
でも、人魚本命チョコはどうしよう?」
「それなら適任がいるじゃない。アフロちゃんに頼めば大丈夫だよ」
「あ、そっか。元王子様の隠居まで一直線だね!」
二人はいえーい☆とハイタッチを交わす。
彗星の如く現われた一日限りの新ブランド
「人魚チョコ」――
そして嫉妬に暴走した赤眼の戦士――
それらは、新たなる伝説として陸の上で語り継がれることとなった。
「ああ……チョコが……!」
だが次の瞬間……
爆発!!
ロードは彼方へ吹っ飛び、地に伏した。
「すり替えておいたのさ……!
二人が戦っている間に、
人魚本命チョコを
マンドレイクチョコとね!」
「その声は、ミリア……!」
「ハルフゥちゃん、ロードのケアは私に任せて。
ロードが心身共に疲れ果てた時こそ、サキュバスの歩み寄る余地が生まれるというもの。
ここで思いっきり甘やかして、ロードは私にメロメロなんだから」
「まさか……最初からそれが狙いで!?」
「そう……黒幕は私。これが本当のエッチポンプ!」
「マッチポンプじゃない……?
でも、人魚本命チョコはどうしよう?」
「それなら適任がいるじゃない。アフロちゃんに頼めば大丈夫だよ」
「あ、そっか。元王子様の隠居まで一直線だね!」
二人はいえーい☆とハイタッチを交わす。
彗星の如く現われた一日限りの新ブランド
「人魚チョコ」――
そして嫉妬に暴走した赤眼の戦士――
それらは、新たなる伝説として陸の上で語り継がれることとなった。
- fin-
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