偉大なる大王の甥、円卓の騎士に捧げられた瀟洒な剣は、全てが一瞥のもとに却下された。
「うーん、違う、全然違うんだよなぁ……」
それを聞いて鍛冶屋たちは憤慨した。
匠が誠心こめてこしらえた剣の、何が不満なのかと。
その装飾の美しきこと、その切れ味の鋭きこと、どれも大王の聖剣に勝るとも劣らずの業物であるだろう、と。
だが円卓の騎士――ガウェイン卿は首を振る。
「あんたらの腕が悪いんじゃなくて、俺にあってないんだよ。
俺って、日中は力が3倍まで増える特異体質だろ?
騎士の力のその3倍……ってどれくらいかわかるか?
普通に優秀な剣じゃ、折れちまうんだ。
重くて頑丈でさえあれば俺にはそれが一番だし、それだけでいいんだよ」
鍛冶屋たちはからかわれていると感じ、怒った。
翌日、皮肉をこめて柱状の「ただの硬材の塊」を剣として王宮に持ち込んだ。
「これ、これだよ! これぞまさに俺の剣だ!」
ガウェイン卿は大いに喜び、その『剣』にガラティンという名まで与えた。
「うーん、違う、全然違うんだよなぁ……」
それを聞いて鍛冶屋たちは憤慨した。
匠が誠心こめてこしらえた剣の、何が不満なのかと。
その装飾の美しきこと、その切れ味の鋭きこと、どれも大王の聖剣に勝るとも劣らずの業物であるだろう、と。
だが円卓の騎士――ガウェイン卿は首を振る。
「あんたらの腕が悪いんじゃなくて、俺にあってないんだよ。
俺って、日中は力が3倍まで増える特異体質だろ?
騎士の力のその3倍……ってどれくらいかわかるか?
普通に優秀な剣じゃ、折れちまうんだ。
重くて頑丈でさえあれば俺にはそれが一番だし、それだけでいいんだよ」
鍛冶屋たちはからかわれていると感じ、怒った。
翌日、皮肉をこめて柱状の「ただの硬材の塊」を剣として王宮に持ち込んだ。
「これ、これだよ! これぞまさに俺の剣だ!」
ガウェイン卿は大いに喜び、その『剣』にガラティンという名まで与えた。
それは剣と呼ぶには、あまりも無理があった。
叩かれていない。研がれていない。
それはただの鋼塊……『柱』であった。
よい剣が見つかったと自慢するガウェイン卿に、大王も、他の円卓の騎士たちも、思わず目を剥いた。
そして大王は一言、「ガウェインらしいな」。
だがその冗談のような武器は、戦いの本質を戦場に再認識させた。
日中、城門のような盾と柱のような剣を軽々と振り回すガウェイン卿は、無敵だった。
嵐のような圧倒的な暴威が、鎧や兜ごと敵を弾き飛ばし、ひしゃげさせ、押し潰す。
剣術などというものはどこにもない。元より、剣の間合いですらない。
剣として振るわれる柱――ガラティンは歓喜し、無言の内に吼えた。
自らに戦場という場を見出してくれた、主への感謝をこめて。
叩かれていない。研がれていない。
それはただの鋼塊……『柱』であった。
よい剣が見つかったと自慢するガウェイン卿に、大王も、他の円卓の騎士たちも、思わず目を剥いた。
そして大王は一言、「ガウェインらしいな」。
だがその冗談のような武器は、戦いの本質を戦場に再認識させた。
日中、城門のような盾と柱のような剣を軽々と振り回すガウェイン卿は、無敵だった。
嵐のような圧倒的な暴威が、鎧や兜ごと敵を弾き飛ばし、ひしゃげさせ、押し潰す。
剣術などというものはどこにもない。元より、剣の間合いですらない。
剣として振るわれる柱――ガラティンは歓喜し、無言の内に吼えた。
自らに戦場という場を見出してくれた、主への感謝をこめて。
霧の薄いある日、ガラティンは城の中庭に転がされた。
「ほら、ガラティンも日向ぼっこしやがれ。気持ちいいぞー」
「……」
当然だが、ガラティンは答えない。
満面の笑みで柱に話しかけるガウェイン卿を、通りかかる人々が奇異の目で見ている。
だがガウェイン卿は気にする風もなく笑うのみだった。
「ははは、なんでぇ。騎士が愛剣に話しかけるのは、普通だろうによ」
「……」
「……ところが相棒。ここだけの話、俺たちには弱点がある」
「……」
ガウェイン卿は声をひそめて、陽光に照り輝いている柱に語りかける。
「俺は午後からは全然ダメ、お前もまったく持ち上がらないってな」
「……」
「お前は知らんだろうが……
我らが王国は、夜は夜でなあ……風情があっていいんだぜ。
お前を夜の街に連れ回せないことだけ本当に残念だよ、相棒」
「……」
「お前に、足があったらなぁ」
ガラティンは、主のその言葉を確かに聞いていた。
「ほら、ガラティンも日向ぼっこしやがれ。気持ちいいぞー」
「……」
当然だが、ガラティンは答えない。
満面の笑みで柱に話しかけるガウェイン卿を、通りかかる人々が奇異の目で見ている。
だがガウェイン卿は気にする風もなく笑うのみだった。
「ははは、なんでぇ。騎士が愛剣に話しかけるのは、普通だろうによ」
「……」
「……ところが相棒。ここだけの話、俺たちには弱点がある」
「……」
ガウェイン卿は声をひそめて、陽光に照り輝いている柱に語りかける。
「俺は午後からは全然ダメ、お前もまったく持ち上がらないってな」
「……」
「お前は知らんだろうが……
我らが王国は、夜は夜でなあ……風情があっていいんだぜ。
お前を夜の街に連れ回せないことだけ本当に残念だよ、相棒」
「……」
「お前に、足があったらなぁ」
ガラティンは、主のその言葉を確かに聞いていた。
ある日の暮れ時、慌ただしく駆けていった主は、次の朝日が昇っても帰ってこなかった。
その翌日も、またその次の日も、主は帰ってこなかった。
亡くなったのだろうと思った。
いかなる理由があろうと、いかなる経緯を辿ろうと、死は騎士の宿命だ。
だが置き去りにされたガラティンは、その最期を共にできなかったことを嘆いた。
主の最期に立ち会えないなど、それは決して剣の宿命ではない。
そして、八つ当たりめいた感情だとわかっても、憤らずにはいられなかった。
主の戦った敵は、同じく円卓の騎士――
主の特殊な力が正午を過ぎれば発揮されないことを知った上で、夕過ぎに軍を率いたのだ――
敵のなんと憎らしいことか。何が騎士道か。
己のなんとふがいないことか。何が愛剣か。
王国は滅び、置き去りにされたガラティンはやがて、誰もその名を知らぬ柱へと戻った。
悠久の時の中、ガラティンは主の陽光のような笑みによって授けられた心を失い、眠った。
そして目が覚めたとき――――
強靭な四つの脚を得ていた。
その翌日も、またその次の日も、主は帰ってこなかった。
亡くなったのだろうと思った。
いかなる理由があろうと、いかなる経緯を辿ろうと、死は騎士の宿命だ。
だが置き去りにされたガラティンは、その最期を共にできなかったことを嘆いた。
主の最期に立ち会えないなど、それは決して剣の宿命ではない。
そして、八つ当たりめいた感情だとわかっても、憤らずにはいられなかった。
主の戦った敵は、同じく円卓の騎士――
主の特殊な力が正午を過ぎれば発揮されないことを知った上で、夕過ぎに軍を率いたのだ――
敵のなんと憎らしいことか。何が騎士道か。
己のなんとふがいないことか。何が愛剣か。
王国は滅び、置き去りにされたガラティンはやがて、誰もその名を知らぬ柱へと戻った。
悠久の時の中、ガラティンは主の陽光のような笑みによって授けられた心を失い、眠った。
そして目が覚めたとき――――
強靭な四つの脚を得ていた。
放浪の剣となったガラティンは、戦士や魔物を問わず、手当たり次第に戦いを挑んだ。
(主は、太陽の下で我と共にあれば、敗れることなどなかった)
それを証明するために、ガラティンはただひたすら強敵を求め、襲いかかる「魔物」となった。
そしてその修羅道の中で、自らと同じように無念を抱え、生命体として変容した武器と出会った。
トリシューラは獣の咆哮を上げるガラティンの一撃を受け止め、思念を飛ばす。
(猛き陽光の剣よ、我が言葉に耳を貸せ)と。
だがガラティンは攻撃の手を止めない。
思考する矛トリシューラは諦めず、思念を持って伝える。
(この世は今、ねじ曲がっている。
死んだはずの者が生きていることすらある。
もしかすると……お前の主もそこに……
アルカナの力の元にいるかもしれない)と。
主が――ガウェイン卿が――いるかもしれない――?
次の瞬間、ガラティンは戦うことを忘れていた
(主は、太陽の下で我と共にあれば、敗れることなどなかった)
それを証明するために、ガラティンはただひたすら強敵を求め、襲いかかる「魔物」となった。
そしてその修羅道の中で、自らと同じように無念を抱え、生命体として変容した武器と出会った。
トリシューラは獣の咆哮を上げるガラティンの一撃を受け止め、思念を飛ばす。
(猛き陽光の剣よ、我が言葉に耳を貸せ)と。
だがガラティンは攻撃の手を止めない。
思考する矛トリシューラは諦めず、思念を持って伝える。
(この世は今、ねじ曲がっている。
死んだはずの者が生きていることすらある。
もしかすると……お前の主もそこに……
アルカナの力の元にいるかもしれない)と。
主が――ガウェイン卿が――いるかもしれない――?
次の瞬間、ガラティンは戦うことを忘れていた
ガラティンは、英国『アーサー王伝説』に登場する円卓の騎士ガウェインの愛剣。
ガウェイン卿が「日中、力が三倍になる」というのは『アーサー王伝説』本家の設定である。
lov3にのみ登場。
ロキによって復活させられ、自律を得た「五影剣」の人獣担当。
ちなみにトリシューラは海種担当。
開発によると五影剣は「一番にはなれなかった剣たち」がコンセプトであり、
「円卓の騎士と言えばアーサー王の剣エクスカリバー」ということから、
名剣でありつつも有名になりきれないガラティンが選ばれた。
ガウェイン卿はlov4に登場。「剣を持たないで盾だけ持った姿で」不死種として復活している。
サヴァスロでは、砦には目もくれない戦闘的な使い魔として登場。
フレーバーテキストもその動機を解説するエピソードになっている。
余談の余談だが、コラボした作品「コードギアス」のナイトメアフレームやその乗り手には、アーサー王伝説がモチーフとして使われている。
「ラウンドナイツ(円卓の騎士)」「ランスロット」「ガウェイン」「パーシヴァル」「モルドレッド」「空中要塞アヴァロン」等。
……しかし元々「円卓の騎士」は「円卓=上座と下座の区別が無い机、対等な騎士の盟約」を表わす逸話・伝承であり、
それにナイトオブワン〜ナイトオブテン等それに序列をつけるのは微妙にずれている感じもするが、かっこいいから大丈夫。
ガウェイン卿が「日中、力が三倍になる」というのは『アーサー王伝説』本家の設定である。
lov3にのみ登場。
ロキによって復活させられ、自律を得た「五影剣」の人獣担当。
ちなみにトリシューラは海種担当。
開発によると五影剣は「一番にはなれなかった剣たち」がコンセプトであり、
「円卓の騎士と言えばアーサー王の剣エクスカリバー」ということから、
名剣でありつつも有名になりきれないガラティンが選ばれた。
ガウェイン卿はlov4に登場。「剣を持たないで盾だけ持った姿で」不死種として復活している。
サヴァスロでは、砦には目もくれない戦闘的な使い魔として登場。
フレーバーテキストもその動機を解説するエピソードになっている。
余談の余談だが、コラボした作品「コードギアス」のナイトメアフレームやその乗り手には、アーサー王伝説がモチーフとして使われている。
「ラウンドナイツ(円卓の騎士)」「ランスロット」「ガウェイン」「パーシヴァル」「モルドレッド」「空中要塞アヴァロン」等。
……しかし元々「円卓の騎士」は「円卓=上座と下座の区別が無い机、対等な騎士の盟約」を表わす逸話・伝承であり、
それにナイトオブワン〜ナイトオブテン等それに序列をつけるのは微妙にずれている感じもするが、かっこいいから大丈夫。
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